仮想通貨税制質疑(議事録)

2019年05月17日

以下、2019514日の財政金融委員会で行った暗号資産税制に関する議事録です。 

日本維新の会の藤巻です。

 まず、暗号資産の税制についてお聞きしたいんですけれども、先週九日のこの委員会で、黒田日銀総裁に、私、暗号資産についてどう思うかというふうにお聞きしたんですけれども、そのときに黒田日銀総裁が、その値動きが極めて激しいということもあって支払決済には余り使われておりませんで、ほとんど投機の対象となっておりますと答えられたわけです。日銀総裁がこう答えられているわけですけれども、私、実はデータを集めて今の暗号資産というのは支払手段ではなくて、やはりその値上がりを目的として取引している人が大部分だということを示そうと思ったんですよ。それであるならば、譲渡所得ではないかというロジックで行こうかなと思ったらば、いみじくも日銀総裁が断定してくださったわけで、そうであるならば、これ支払手段じゃなくてこれ資産ですから、そういう意味でいうと、値上がり益を目的に取引している商品であるわけですから、当然のことながら、そして今度のこの通常国会においては暗号資産と名前も変わりますし、それから金商法の縛りも入ってくるわけですから、金商法の規制下にある暗号資産に関しては、金融所得課税の一環として外貨預金の為替益も含めて全部一緒くたにして、損益通算もできて、そして二〇%の源泉分離にするのが一番合理的ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。

 当委員会でもこれまでいろいろ御議論があったところでございますけれども、委員ただいま御指摘されましたように、資金決済法等の一部改正法案では、金融庁によれば、法令上の呼称は国際的な動向も踏まえまして仮想通貨から暗号資産に変更するものでございますけれども、その定義を変更するということではございませんで、資金決済法上、暗号資産は引き続きこれまでの仮想通貨と同様に対価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値として規定されることとなります。

 また、消費税法を見ましても、支払手段に類するものとして位置付けられているということでございまして、外国通貨と同様にその売却益等は資産の値上がりによる譲渡所得とは性格を異にするものと考えておりまして、一般的に雑所得に該当するという現行の取扱いを変更する必要はないと考えております。

 委員が御指摘されましたように、暗号資産の売却益を二〇%の分離課税の対象にするということにつきましては、これまでも申し上げているとおり、所得税は総合課税を原則としております。所得が高い方に多く税を負担していただくという所得再分配の考え方に基づいて、全ての所得を合算して累進税率を適用するということでございます。こういった原則を変えて、再分配機能を損なってまで暗号資産取引を強く政策的に支援するということで二〇%の分離課税に位置付けるということが適当か、必要かという課題があると考えております。

○藤巻健史君 定義は支払手段であろうと、立法事実というか、事実として黒田日銀総裁がおっしゃったように、支払手段としては使われないわけですよ。それをきちんと税制に反映するべきではないかと私は思うんですよね。

 今までの星野局長その他の国税担当者の方と議論してきた経緯としますと、私、最初は明らかに資産性を否定していたと思うんですよ、国税当局は。

 段々議論しているうちに資産性を認めた、認めているけれども、でも譲渡所得に起因する資産ではないというところに今ロジックが来ているんじゃないかと思うんですが、これも何回か申し上げていますけれども、租税法の大家と言われる金子宏先生、この先生が、一番、租税法は学説の中でも一番権威のある学説と言われておりますけれども、その金子宏先生が今年の「租税法」の改訂版、二十三版か何かで、これ、きちんと解釈論のレベルで譲渡所得にも一理あるとおっしゃっているわけですよね。

 雑所得というのは、十ある所得分類のうちの九つに当てはまらないものが雑所得という法律の建前になっているわけですから、金子先生が譲渡所得であるとおっしゃったらば、それはそうじゃないよと否定する責任というのは、立証責任というのは国税当局にあると思うんですけれども、是非金子先生の、あの先生は大したことがないとか学説的に間違えているということを、国税当局に否定していただかなくちゃいけないと思うんですが、是非否定していただければと思いますけど、どうでしょうか。

○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。

 これまでのお答えの繰り返しになるところもございますけれども、いわゆる租税法に関しましては、委員御指摘の金子宏教授始めとした大学教授のほか、多くの有識者の方による研究が行われておりまして、様々な学説があることと承知しておりますけれども、国税当局としては、個々の学説について見解を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、いわゆる暗号資産の譲渡益に係る所得区分につきましては、国税当局としての見解を申し上げれば、所得税法上、譲渡所得は資産の譲渡による所得と定義されておりまして、当該所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨と解されているところでございます。

 この点、いわゆる暗号資産については、資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対する使用することができる財産的価値と規定されておりまして、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられていることから、外国通貨と同様、いわゆる暗号資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられるところでございます。

 このため、国税当局としては、いわゆる暗号資産は、資産ではあるものの、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、その譲渡による所得は一般的に譲渡所得には該当しないものとして取り扱っているところでございます。

○藤巻健史君 今のお話聞いていると、定義が支払手段だから支払手段の税率を適用するというふうに聞こえるんですけれども、事実として、定義はそうかもしれないけれども、実際に暗号資産は支払手段として使われていないわけですよ。日銀総裁はそうおっしゃっているんですからね、きちんと。データもきっとあるかと思いますけれども。だとすると、現実に合わせて税制は変えていくべきじゃないんですか。若しくは、定義が悪いんだったら定義を変えるべきなのが国のやることじゃないかと私は思いますけどね。

 それからもう一つ申し上げると、学説はいろいろあるけれども、それは聞くけれども国税の感覚はこうだということは、例えば学説があっても学説よりも我々の方が偉いんだと、我々が税制決めるんだというふうに聞こえてしまうんですけど、違いますか。学説が、学説がもし、じゃ、金子先生の学説に集約していったら国税は変えていただけるんですか。それとも我々の方が偉いんだから絶対に変えないというふうに、スタンスになるんでしょうか。お聞きします。

○政府参考人(並木稔君) 繰り返しになりますけれども、租税法に関して多くの有識者の方による研究が行われて様々な学説があることは承知しておりまして、国税当局としては、その学説についての見解を述べることは差し控えます。

 他方で、国税当局としては、いわゆる暗号資産を譲渡した場合について、先ほど申し上げたとおり、暗号資産は、資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されることなどによりまして、その譲渡益は資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられることから、暗号資産は、資産ではあるものの、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、その譲渡による所得は一般的に譲渡所得には該当しないものとして取り扱っているとの考え方を、まさに課税上の取扱いを示す当局としてその見解を明確にお示しできているというふうに考えているものでございます。

○藤巻健史君 今の答弁を聞いていますと、やっぱり資金決済法の定義を変えればいいだけの話じゃないですか、その実態に変えればいいだけじゃないですか。実態は変えても定義は定義だと、こうおっしゃるんでしょうかね、と疑問を思います。

 次に、関連して、今度は金融大臣にお聞きしたいんですけれども、三月十日の朝日新聞に元ソニーCEOの出井さんのインタビュー記事が載っていたんですね。IT化遅れ、気が付けば米中に敗北というタイトルだったんですけれども、その中で、質問が、平成の時代から得られる教訓はという記者の質問に対して、インターネットという時代になぜ乗れなかったのかを考える必要があります。平成の間に、アメリカではGAFA、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンですけれども、それが、中国ではBAT、百度、アリババ、テンセントが台頭しました。そして、人工知能、AI、ブロックチェーン、仮想通貨といった新しい技術が台頭しています。インターネット時代に気付かなかった平成の愚を繰り返してはいけませんと書いてある。ちょっと略しますけれども、こうした技術でどんな未来をつくるかを考え、実現する制度を国が早急に整える必要がありますと言っているわけですよ。

 出井さん、経済界では重鎮ですよ。経済界の重鎮の出井さんが、これからはAI、ブロックチェーン、仮想通貨という技術が台頭して、それが重要だと言っているんですよね。それを税制で殺して、日本の飯の種を奪っていいんでしょうかね。

 私は、やっぱりどういうふうに税制が国を一番成長させるかということを考えるべきであって、それは、仮想通貨の税金が、これは配当所得であるとか給与所得なんて言ったらそれはばかという話であって、でも、学説的に認められる一つの学説なんですよ。それであれば、その幾つか認められているうちの学説の中で、何も定義にこだわることはなくて、どうやって日本を成長させるか、そのための税制は何が必要であるかということを考えて税制って考えるべきじゃないですか。日本の将来を殺すための税制じゃなくて、日本の将来を生かすための、我々の飯の種をどうやってつくるかというのが税制というものだと、税金だと私は思いますけどね。

 もう一つ言うと、今度、暗号資産ということで、名義も変わりますし、資産という価値、ここでみんなが取引しているということは、これ、資産価格の上昇、資産効果と極めて関係あるわけですよ。

 一九八五年から九〇年のバブルというのは何であんなに経済が狂乱したかというと、土地の価格、それから株の価格が上がった、資産価格が上昇したからあれだけの狂乱経済になったわけで、狂乱し過ぎでしたけどね。この前も何回か申し上げていますけれども、消費者物価指数は、今、日銀で決めている二%よりもよっぽど低かったわけです、〇・三とか〇・四%。でも、狂乱したんです。それは資産価格が上昇したからなんですよ。要するに、資産価格が上がるということは、日本経済にとってもう簡単にデフレ脱却して、非常にいい効果があるわけです。

 だとしたら、今、若者の間では、暗号資産、非常に人気ですよ。彼らが買って非常に豊かになって金使えばまさに資産効果が出るわけで、その点からしても日本に貢献するし、それから、日本が税制を改正して外国からの技術をどんどん導入するようになれば、これ日本に技術が蓄積されるわけですから、これだけのものを税制で殺してはいけないと私は思うんですが、その辺について、大臣、お聞きできればと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) これも度々申し上げておりますけれども、暗号資産に活用されておりますこれはブロックチェーンの技術等々を含めまして、これはフィンテックと言われるファイナンシャルテクノロジー等の新しい技術分野においては大きな可能性があると、これは前々から申し上げているとおりです。技術の安全性というものを確保しつつ、これは利用者の利便性、かつ利用者の安全性も要るかと思いますが、向上につながるよう、様々な主体がその活用にチャレンジしていくと、これ大変大事なところだと思っております。

 他方、暗号資産の税務上の取扱いということについては、これは、委員会は売却益を雑所得ではなくて譲渡所得とすべきだということの御指摘をいただいているところだと思いますが、こうした所得税の所得区分については、これは所得の性質において分離されるべきものであって、一義的には特定の政策目的により判断されるべきものではないと考えております。

 また、委員からは、暗号資産の売却益を株式と同様二〇%の分離課税だというのの対象にすべきという御提案をいただいておりますが、これは、株式の分離課税、売却益の分離課税というのを対象としておりますのは、所得税の再分配機能を一定程度損なってもなお家計の株式等への投資を後押しする、貯蓄から投資という政策的要請を前提としたものであります。したがいまして、暗号資産をこれと同列に論ずることができるかといえば、なかなか難しいのではないかと考えておるのが現状です。

○藤巻健史君 今大臣はブロックチェーンの重要性をとうとうと述べられましたけれども、ブロックチェーンと暗号資産というのはコインの表と裏の関係ですよ。特に、パブリック型の暗号資産というんですかね、これは、なかったらば、暗号資産がなければパブリック型のブロックチェーンは成立しないですよ。だって、中央管理者がいないんですから、誰かが管理しなくちゃいけない、それはマイナーが管理しているんですから。ということで、ブロックチェーンがよろしいと、非常に未来があるということを認められるんだったらば、暗号資産も一緒にやっていかなかったら、それは分かっていないというふうに言わざるを得ませんよね。だとするんだったらば、税制考えるべき。

 それから、先ほどから何度も言っていますように、先ほど大臣は性質によって分類が違うって言っていましたけど、それは分類が違っても、学説では、譲渡所得だという学説あるし、それも最高権威者がそうおっしゃっているわけですから、これをわざわざ一番日本にとって不利な税制にとどめておく必要は全くないと私は思います。

 ちょっとほかの質問もあるので、今日の暗号資産に関してはここにしておきますけれども。