本文(世界的長期金利の上昇)

2017年07月09日

(本文)
付録「フジマキな日々」は来週3回分まとめて掲載いたします。18日(月)が8月出版の本の原稿締め切り日のためです。今週は本の執筆に集中したいと思います。東北被災地視察旅行はありますが。

1、世界的な長期金利上昇
欧米の中央銀行による金融引き締めで世界的な長期金利の上昇傾向が明白になった。この上昇傾向を説明する記事の中で「最後尾を走るのは日本」という形容を見たが、日本は走っていない。走れない。底なし沼に足を取られて走れないのだ。私が先週、本格的ドル高/円安の傾向が今後強くなるだろうと書いた理由である。

2.米紙ウォールストリートジャーナルの記事
米紙ウォールストリートジャーナルの7月6日の「FRB内に広がる資産バブルへの警戒感」という記事は極めて重要だ。
「5日公表された6月13・14日開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録によると、市場の過熱が次の危機の種をまくかもしれないとの懸念がFRB内で高まりつつあるようだ。労働市場が堅調で金融環境も安定する中、株式・債券相場がミニバブルの様相を呈しているため、FRBはインフレ指標がこれ以上改善しなくても金融緩和の解消をより意識的に進める可能性がある。
(中略)
アムハースト・ピアポント証券のチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は、これだけ資産価格に注目しているのなら、FRBがバランスシート縮小を早期に始める可能性は高いと指摘。それどころか、資産バブルを早めにつぶすことに注力するようになれば、FRBは経済指標の動向から妥当と考えられる水準よりも高い水準まで緩やかな利上げを続ける新たな口実を得ることになると述べた。」という内容だ。
これは私がしょっちゅう主張している内容そのものだ。日本のバブルはCPI(消費者物価指数)が0.5%(全国・総合)と極めて安定していたのに、資産価格の高騰・完全雇用で狂乱経済を迎えてしまった。日銀はそれに気がつかず金融引き締めが遅れた。FRBはその失敗をよく研究していると言うことだろう。(日本の)市場が予想しているより、かなり早いペースで引き締めが進むと思う。

3.米紙ウォールストリートジャーナルの記事が正しいのなら?
バランスシートの縮小とはFRBが米国債の購入を減らしていくことだから、長期債の需給に大きな影響がある。米長期国債の値下がり(=米長期金利の上昇)で日米長期金利差はますます開き円安・ドル高が進行する。
米国長期債を買っている人は短期米国債に乗り換えた方が良い。ドル高円安の流れに乗るためにはドル資産の保有が重要だからドル資産には固着すべきだ。
ただ長期債はドル建てでの値段の下落が大きい(為替の益が大きく減じてしまう)ので、ドル価での値段の下落の小さい米国短期債への乗り越えるのが望ましい。米国短期債は為替の利益の方がドル建て値段の下落よりはるかに大きいと思うからだ。

4.日銀の国債指値オペ
過去1回しかしたことのない指値オペ(=日銀が利回りを定めて上で国債を無制限に買い入れる)を先週日銀が行った。
市場価格より低い所での買いだったので応札額はゼロだったようだが、私が頭取なら、次回の指値オペでは多少購入価格が低くても、保有国債の全額を売りきる。そこでキャピタルゲインを全てとる。
世界的に長期金利が上昇を始めると、ある時点で相場が総崩れとなる可能性が極めて高い。特に現在の長期債市場は中央銀行の買い支えで高値(=超低金利)を保持しているのだから崩れる時は極めて早く脆い。
全員が人より早く売り逃げようとする。だからよほど幸運ではないとまずは逃げ遅れる。大量に買ってくれる買い手は日銀しかいない。だから日銀に売ってしまう。
次の指値オペがラストチャンスかもしれない。
保有国債を全て売り切るか否かは銀行が存続しうるか否かを決定するほどの重大な判断だと思う。私は日銀と一緒に倒産するのは嫌だ。

5.円は避難通貨か?
先週、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを飛ばした際、「北朝鮮有事を煽って円を買う」動きが短時間ではあったがあった。以前にも書いたが、アホか、と思う。北朝鮮有事で外国人が日本に逃げ込むのか?有事があれば、本人が逃げ込まなくても資金だけでも逃がそうとする先が避難先のはずだ。株の世界では「近くの戦争は売り、遠くの戦争は買い」との格言がある。近くの戦争は被害を受けるが、遠くの戦争では、戦争景気で儲かるからだ。北朝鮮は日本に近い。・

6.先週の週刊朝日「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」
先週の週刊朝日「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」は「商工中金の不正、見えぬ謙虚さと浮かぶおごり」というタイトルで 以下の内容でした
「かなり昔の話、ハワイのホテルをチェックアウトする際、請求書に驚いた。
家内と2人で食べた前日の夕食代が1万1千ドル(約120万円)。冗談よしてよ~・サウジの王様じゃあるまいし、一晩でそんな美食をしたら一発で痛風だ。
米国留学中に、米国人のまねをして目を皿のようにして請求書を見る癖がついていたから、サインの前に見つけて、事なきを得た。隣でやっていた中国人の結婚パーティー費用を間違えて私に請求したようだ。米国人か請求書を念入りに見るわけを実感したか、日本ではありえない間違いだ。
★  ★
政府系金融機関の商工中金が5月、金融庁などの立ち入り検査を受けた。災害や金融危機で業績悪化した企業向けの危機対応業務で、取引先の売上高や純利益など財務データを改ざんするなどの不正をした。
邦銀に11年、外資系銀行に15年勤務した私の感覚からすると、数字の改ざんなどありえない不正だ。一個人どころか組織的な不正だったようで、びっくり仰天だ。普通の銀行なら、数字の改ざんは「やってはいけないこと」の基本中の基本。
(中略)
旧大蔵省(現金融庁)の検査や日本銀行の考査もチェック機能として働いた。入りそうになると、支店は緊張して身構えたものだ。日銀考査で落第点だと、日銀にある当座預金口座閉鎖を余儀なくされる恐れもある。銀行の体をなさなくなり、銀行廃業だ。
(中略)
商工中金には、金融庁検査や日銀考査を怖がる謙虚さかあったのだろうか?
政府が株式を半分弱持ち、経済産業省が監督官庁で、社長は元経産事務次官。ペナルティーを受けるはずがない、当座預金を閉鎖されるはずがないとおごりはなかっただろうか?
商工申金は元々、遅くとも2022年までに完全民営化されるはずだった。しかし、危機対応業務を遂行するという理由で民営化をするという理由で民営化を遅らせた。商工中金は融資額を伸ばすため、数字を改ざんしてまで危機状態の企業をつくり出そうとした。
危機対応融資は税金が投入され、バラマキと言えなくもない。選挙民のために融資を引き出させるなど政治家に便利な組織になっている可能性もある。平時の今でも危機対応策は必要なのか?一本来の方針通り、早急に民営化し、監督官庁を金融庁にすべきだと思う。」