日銀メタボ化加速(The財政ファイナンス)他

2020年06月10日

1. 日銀メタボ化加速(The財政ファイナンス)

最近発表された4月末の日銀のバランスシート規模が619兆円となり、昨年末から4か月で46兆円も膨らんだ。この膨らんだ46兆円という額は、1994年のBS規模(50.4兆円)に相当する。この4か月で25年前の日銀一つ分を膨らませたのでだ。「もう、はちゃめちゃ」としか思えない。

1994年間からの25年間で日銀はバランスシートを12.2倍に膨張させたということ。名目GDPが10%しか増えていないのに12.2倍!だ。

60兆円の補正予算を含む今年度新規国債90兆円を今後、日銀がすべて購入するとなるとバランスシート規模は700兆円を超す。ラフな計算だが、日銀は国債保有国債の65%を保有することになる。財政ファイナンスそのもの。

景気が良くなっても、出口はない。景気が良くなってもバランスシートを縮小させるのはもはや完璧に無理。景気過熱でも、世の中、お金がじゃぶじゃぶのままということ。ハイパーインフレ必至だ。

 2.FRB(or米国)に日本経済の生殺与奪の権を握られた。

実はこの4か月で膨らんだ日銀のバランスシート46兆円だが、資産サイドでは「外国為替勘定」の増加が24.0兆円(6.7兆円->30.7兆円)、負債サイドでは「その他預金」の増加20.5兆円(32.3兆円―>52.8兆円)がめだつ。これは思うに為替スワップ協定(ドルをFRBから借り円をFRBに預託する)を実行したせいだと思われる。

3月半ばには米国外でドル需要が急増し、ドルの調達懸念でパニックが起きた。いわゆるジャパンプレミアムが2.5%前後に急騰した。それをこの為替スワップ協定で日銀がドルをFRBから借り邦銀に過疎出すという形でなんとかパニックを抑え込んだわけだ。この協定が実行されなければ、今でもドル獲得のためのパニックが続き、メガバンクもドル資産の売却に走ったり(=米ドル金利の急騰)、ドル市場のからの借り入れから円売り/ドル買い(ドル/円の急騰)をしてドル調達を図ったと思われる。要は、世界中でドルの潜在需要はものすごく強いということ。

より重要なのは、日本は「FRBに金融システムの生殺与奪の権を握られた」ということ。 今後、FRB(or米国)が為替スワップを破棄すると言ってきたら、日本の金融システムはイチコロだ。本来、為替スワップ協定は「自国通貨の通貨危機」に陥いった国が相手国に相手通貨の供給を一時的に依頼する協定のはず。

在日米軍基地や日米安保によって、米国は「日本の生殺与奪の権」を握っていると言える。それゆえに日本は、米国の無理な要求にも最終的にはYesといわざるを得ない。日米安保を破棄されたり、在日米軍が撤退されたら困るからだ。

為替スワップ協定は金融面での日米安保と同じだと思う。FRBに廃棄されたら、日本の金融システムはクラッシュだ。安保や在日米軍の場合は、今まで多くの論争、選挙を経て、日本国民が、それを選択していると私は理解しているが、為替スワップ協定はサラっと決められた。たしかに中央銀行同士の協定だから国会審議等は必要ないのかもしれないが、「日本経済/日本の金融システムの生殺与奪の権」をFRBが握ったと思えるのに、こう軽々しく結んでよかったものだろうか?私自身、勉強不足で「日本経済の生殺与奪の権」を握られたとまで断定していいのか自身が無いので、ここでは疑問として提唱しておきたい。ドルは世界の基軸通貨としての地位をこの協定でより健固にしたとは、最低限言える。

3.デジタル通貨革命

リブラの運営団体が当局からの批判に応え。バスケット型ではなく、ドルやユーロなど単独通貨を裏付けとするリブラの発行を先行させるそうだ。ただ円は落ちた。シンガポールドルは入ったのに、だ。日本は世界からますます遅れていく。当然暗号資産税制もネックだと思われる。金融当局の担当者いわく「日本は拒否していない。国をまたぐ取引が見込みにくい円に魅力を感じていないのだろう」。こんな財務内容が脆弱な中央銀行の通貨・円に取り組まないのはリブラの運営団体は賢明なのかも?円はたとえ紙くずにならなかったとしても、世界で相手にされない地域通貨に落ちこぼれれていく。https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60176230Z00C20A6EA1000/

4.ドミニック・ジョージのこと

美容家の佐伯チズさんがALSで亡くなられた。1~2度TV出演の際、お会いしたことがある。ご冥福をお祈りいたします。ALSといえば私がJPモルガンに転職した時の東京支店の資金為替部長だったドミニック・ジョージのことを思い出す。20年前だったか、ALSで死期を悟ったドミニック夫婦が「お別れ旅行」として、不自由な体で日本に来た。彼の秘書だったシバタさんと4人で食事をした。こんな時、何をしゃべっていいかわかずオドオドしていた私に対し「生きている限り人生は楽しく生きる」という彼の態度に感銘し、また涙したものだ。

彼の頭の良さと言ったら天才的だった。集中して思考すると、他のことに頭がまわらなくなるのも天才だった証拠だとおもっている。「今、何時?」と右手にはめた腕時計を見た時、周りから悲鳴が上がった。右手にビールジョッキを持ったまま右手にはめた腕時計を見たからだ。当然ズボンはグショグショ。

朝礼は毎日、資金為替部長室で行われた。彼だけがデスクにすわり、部員は彼を囲んで円くなって立っている。休暇でハワイ旅行から帰ってきた翌日、彼はハワイで買ってきたボールペンを上にしたりしたり下にしたりしながら、その日も考えに集中した。問題は、そのボールペンが、当時はやっていた「上を向けると美女の水着が脱げ、下を向けると着る人形の入ったボールペン」だったことだ。我々は笑い出したくてたまらなかったのだが、集中している彼の前では笑うわけにもいかなかった。あんなに笑いをかみしめた朝礼はない。

ドミニックとシンガポールに出張した時も焦った。飛行機がまさにタッチダウンする瞬間に、ドミニックはそれまで飛行中もずっと締めていたシートベルトを外し、立ち上がって頭上の荷物を取り出そうとしたのだ。着座していた乗務員も焦ったことだろう。横に座っていた私も当然慌てた。「ドミニック、早すぎます。これからが一番危ない時間帯なんだから!!!」無茶苦茶に頭がよく、愛すべきドミニック、懐かしい思い出が山ほどある。

フランス人のドミニック、その後のボスのスイス人・マーカスマイアー、JPモルガンに転職したおかげで世界の天才レベルの頭脳に沢山会えた。彼らの思考方法も理解出来た。ヘッジファンドオーナーや世界的投資家の超セレブな生活も垣間見た。なつかしい思い出である。 

5.「来るべき経済危機に備えて『暗号資産』に注目せよ」

本日発売にThe 21(PHP研究所)の連載は「来るべき経済危機に備えて『暗号資産』に注目せよ」です。 

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6.ZOOMライブ番組出演「暗号資産について」

昨日は19:00-19:30までコインテレグラフ社主催のZOOMライブ番組に出演させたいただいた。