「FRBは利上げできても、日銀は利上げできない」「日本は貿易立国ではない。投資立国である」

2020年07月09日

1.FRBは利上げできても、日銀は利上げできない。

日経新聞は「円高リスクがあることなどから、日銀がFRBより先に金利を上げることは簡単でなく」と書くが、FRBはしようと思えば利上げが出来るが日銀は利上げしたくても出来ない。債務超過になってしまうからだ。FRBの保有国債利回りは2.6%近くあるため年間12兆円程度の利息収入がある。FRB当座預金の付利金利を上げてもしばらくは損を計上することはは無い(=通貨発行益が+)。しかし日銀が保有する長期国債の利回りは2019年度平均で0.257%でしかない(国債全体では0.247%)。ゆえに年間利息収入はFRB の10分の1の1兆4000億円しかない。しかも今年の補正で増発された90兆円の国債金利はほぼゼロ%だ。それも買うから平均利回りはさらに下がる、日銀当座預金の金利を引き上げたら、たちまち莫大な損の垂れ流し(=マイナスの通貨発行益)で債務超過となり、円が暴落してしまう。なお、日経新聞のいう「物価が徐々に上がるケースならともかく、急上昇して(藤巻注:消費者物価が)2%を突破する場合などには、FRBが静観できない可能性もある」との指摘は正しいと思うし、株などの資産価格が上昇続ける場合も同様だろう。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61293420Y0A700C2EN2000/ 

2.」「日本は貿易立国ではない。投資立国である」 。

20年以上、口を酸っぱくして非難し、いろいろなところで書きまくってきたのにも、かかわらず直そうとしない。新聞の「経常収支黒字」の決まり文句の枕詞が気に入らない。5月のモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字」は1兆1768億円だそうだ。なにが「モノやサービスなどの取引状況を表す」だ?貿易収支は5568億円の赤字。サービス収支は925億円の赤字。「経常収支の“黒字”」は「モノやサービスの取引状況」など表してはいない。モノとサービスの合計は6493億円の“赤字。経常収支が、黒字なのは配当や利息等の「所得収支」が2兆434億円の“黒字”だからだ。2019年通算で見ても「モノの黒」字3812億円、「サービスの黒字」1,248億円で「モノ+サービス」の黒字は5,060億円にすぎない。一方、所得収支は19兆6090億円の大幅黒字だ。「モノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字」と書くと、皆、日本は貿易立国だと思ってしまう。「モノやサービス」の黒字、特にモノの黒字は海外から非難を受ける。相手国は、本来、自国製品で賄うものを日本からの輸入に頼る。すなわち相手国労働者の仕事を奪うからである。一方、所得収支のもとになる海外投資は、相手国の資本充実に役立ち、ほめられこそすれ、非難を受けるすじあいのものではない。政治家はそこを海外に説明すべき。説明すれば、「日本政府は円安誘導をしている」との非難を諸外国から受けず、円安誘導をして日本経済大復活、デフレも脱却出来たのだ。異次元緩和などという副作用満杯の政策ミスをしなくて済んだ。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61274130Y0A700C2MM0000/ 

3.農業復活の最重要員は為替

4人の関係者の建設的意見には傾聴に値する。しかし農業復活の最低条件は円安だ。インフラを整備しても農産物の値段が外国産より大幅に高ければ競争に負ける。為替とは値段そのもの。円安になれば海外農産物の値が上がるから国内農業の競争力は回復する。国会議員の時、TPPなどで国内農業を守りたいのなら補助金出すより「円安を主張しろ」と農水省に主張したが、ポカンとした顔をしただけだった。米国の農業団体はすぐ「ドル安」を主張する。日本の農業団体から為替の話は聞いたことが無い。ただ、今、円安を主張すると、明日、Xデーの引き金を引いてしまうことになるから、私でも今は主張する勇気はない。。しかしながら近いうちに日銀の債務超過で円の大暴落は起こってしまうだろうから日本農業復活は近い。ちなみに192年のドイツのハイパーインフレの本を読んでいると「ハイパーインフレを何とか乗り越えた人は、幸運にも中立国に資金を逃がしていた人、農業等の実業に従事していた人。乗り越えられなかった人は、年金生活者、公務員、政治家」とあった。https://www.nikkei.com/article/DGXKZO61294590Y0A700C2TCS000/

 4.「週刊住宅」への経済記事

私のインタビュー記事が載った「週刊住宅」(6月15日号)が送られてきた。私のコメントの主たるものは、以下のとおり。「国債を増発してそれを中央銀行が買い入れるという禁じ手を世界中でやり始めた。もっとも、日本は禁じ手破りの急先鋒である」「日本は財政ファイナンスにどっぷり浸ってきた。ハイパーインフレの可能性や日銀の破綻さえありうる。ハイパーインフレは兆しを読めないのが怖い。昭和21年の預金封鎖や旧紙幣の失効が起こるかもしれない」「不動産についても、以前は米ドルでヘッジしての購入を奨めていたが現状は様子見を奨める。ものすごい勢いで日銀は国債を購入している。ほとんどの日本人は信じないが、長期金利が0.3%上昇するだけで日銀は耐えられない。コロナ禍でメガ銀でもドル不足に陥ったが、日銀が破綻すれなFRB(米連邦準備理事会)が為替スワップ協定を維持するか疑問だし、維持するにしても増税などの改善要求をするはず。実需であっても銀行ローンで不動産購入をすると金融クラッシュが怖い。低金利の恩恵を受けた不動産はこれからハイリスク・ハイリターンになるだろう」 

週刊住宅②

5.元日銀総裁福井氏の「財政状況への憂い」

元日銀総裁の福井俊彦氏が、現在勤めるキャノングローバル戦略研究所の機関紙冒頭で理事長挨拶を書いていらっしゃる。コロナ禍後の日本のあるべき姿を論じているが、最後にやはり、日本の財政状況を憂いておられる。元日銀総裁という立場だけに過激な(=本音)は言えないのだろうが、「(財政再建に関して)最も荷の重い」との表現のなかにその危機感を表明しているように思う。福井氏いわく「最後に、コロナ戦後処理として全ての国が負担するもう一つの大きな課題が、財政再建であることは申すまでもない。最も荷の重い日本がこの点でも長期的に見てcredible と目されるプランを早く確立する必要がある」