「『時給上昇』の方が『雇用者数伸び悩み』より重要では?」「日銀が国債保有額を減らすのはETFを減らすより100倍難しい」他

2021年09月06日

1.「『時給上昇』の方が『雇用者数伸び悩み』より重要では?」

金曜夜の米国雇用統計では非農業者雇用さや数の数字が、市場予想よりかなり悪かった一方、平均時給はがかなり上昇した。「雇用困難で時給が上昇。インフレ懸念が強まるな」が私の最初の感想だった。米国長期金利は一瞬下がった後、上昇に転じたから、結局、私と同じような解釈をしたのだろう。一方、ドル円は下押し。雇用者数を重視するFRBはテーパリング開始を遅らせるのでは?とでも解釈したのだろうか? 今、FEDが気にし始めているのは「インフレが本当に一時的かどうか?」だ。雇用者数がインフレに直接影響するとは思わない、むしろ時給上昇の方が影響をする。それ以上に、インフレにもっとも影響するのは資産価格だ。

資産価格の上昇が継続すると、資産効果で経済は狂乱し、その結果CPIは急騰する。日本のバブル時は乱経済の物価押上げ効果を、3年間で130円もの円高というデフレ要因が相殺した。だからインフレは起きなかった。しかし今の米国はドルが安定していて、相殺要因が無い。米国のインフレはすさまじいものとなっていくと私は思っている。金曜日の米長期金利の上昇は正しい反応だろう。

テーパリングが始まっても、当面は、市場へ資金が流入する(=FRBのバランスシートは拡大を継続=負債サイド(=お金の供給量)も拡大)。 異次元緩和が継続するということだ。市中にお金が供給される限りにおいて、株の暴落は当面無いだろう(もっとも、私は今は株には手を出さないが)

 

2.「日銀が国債保有額を減らすのはETFを減らすより100倍難しい」

9月4日日経新聞「日銀ウオッチ」は、とても良く出来た考察だと思う。ただ1か所だけ問題があった、「満期になれば中銀のバランスシートから抜け落ちる国債と異なり、株式は売らない限り残り続ける」、この文の前には「理論的には」とつけて欲しかった」。現実には、今の日銀は、国債の満期時に国債保有残高を落とすことは不可能。株の残高を落とすのより100倍も難しい。私が、もう日銀は中央銀行の対(てい)をなしていないという理由。

償還時に国が日銀にお金を返すためには(実務的には日銀にある政府預金口座残高を減らす)」政府にお金が無ければならない(=十分な政府預金残高が無ければならない。政府は毎年150兆円くらいのお金をかき集めなければならない(110兆円くらいの国債の満期償還のための資金と35兆円~40円の、その年の赤字分)。日銀以外に誰がこれほどの巨額の国債を買ってくれるのか?40%くらいの金利を払えば別だろうが(最大の買い手がいなくなれば、どこまで価格が下落するかわからず(=長期金利が暴騰)誰も怖くて買えっこない)。日銀しか低利での買い手がいないとなれば、いつまでも日銀の保有国債額は減らない。減らなければインフレになったときに日銀は死に体となる。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75459180T00C21A9EA4000/

 

3「“オリパラ”で私たちはどれほど犠牲を払うのか?」

9月1日に発売された「婦人画報」の私の連載は「“オリパラ”で私たちはどれほど犠牲を払うのか?」というタイトル。「そんな選手たちには大いに感謝したい 。しかし、残念ながら、7月19日の日本経済新聞夕刊が紹介していた米紙ワシントン・ポスト(電子版)記事が我々を現実に引き戻す、ワシントン・ポストの記事には「納税者の負担となる膨大な請求書を見るにつけ『 東京都民はなぜ、誰のためにこの犠牲を払うのかを自問自答している』とある、コロナ禍での東京オリンピックでは、無観客開催などの理由もあり、赤字額は想定以上となるだろう。オリパラが終われば 赤字が問題となってくる 。オリパラ鑑賞のために我々は いくら払うことになるのだろう 、と。都公共交通機関の値上げか 、水道料金の値上げか、固定資産税の規定一杯までの値上げとなるか?それともコロナ対策費の削減か?IIOCと都と国の赤字の押し付け合いが始まっているそうだから 、国の借金の増加で解消か? いずれにしろ、この問題から目を背けるわけにはいかない現実がある」

婦人画報

4.「地盤沈下の続く日本経済」

9月3日の梶原誠日経新聞コメンテーターの記事。特に以下の部分は注目。

日本は世界最大の借金王国になった一方、40年間、断トツのビリ成長。もういい加減「大きな政府(=社会主義的国家う遠泳)」から脱して民間主導の「小さな政府(真の資本主義国家)」に変わらねばならない。国民、政治家はまだ気がつかず、出てくるのは枝葉末節な政策ばかり。

「もたつく間にも日本経済の地盤沈下は進んでいる。世界の国内総生産(GDP)に占める割合は94年に18%だったが、2017年以降は6%を下回る。GDPを押し上げる生産性は韓国に抜かれ、19年は先進37カ国中26位に沈んだ」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD3173Q0R30C21A8000000/