「マーケットの動きで、日銀ますます窮地に(財勢ファイナンスのツケ)」「矢野財務官発言はXデイの予兆」他

2021年10月11日

1.「マーケットの動きで、日銀ますます窮地に(財勢ファイナンスのツケ)」

原油WTI先物が、ついに1バレル81ドルを超え世界的にインフレ懸念が強まってきた。もちろん、根っこには私がいつもいう資産効果による強烈なインフレ圧力がある。それを反映し米長期金利が相変わらずじりじり上昇し続け、円安がそれにつられて進行。円の長期金利も(まだ緩いペースに過ぎないが)上昇を開始した。その結果。日銀の債務超過リスクがジワジワと深刻化している。これ自体が(日銀危機を織り込んでの)円安を加速度的に進行させる可能性がある。外資の審査部は目を皿のようにして、日銀リスクを凝視していると思う。

 

2.「矢野事務次官発言を攻撃する政治家は信用失墜、政治生命を失うリスクも」

金曜の朝8時に家を出て旅行に出かけて今少し前に帰宅した。したがってこの3日観は、ほとんどニュースを見ていなかったのだが、今、自民党の高市早苗政調会長が10日のNHK番組で、「未来を担う子供たちに投資しない。これほどバカげた話はない」と批判したというニュースを読んだ。自民党内にも矢野事務次官発言に不快感を持つ政治家がいるという。しかし矢野財務官の発言は、自分の職を賭しての発言だ。この発言を非難するのなら、その政治家も、職を賭すことになると思う。もし、ちかじかX デイが来たら、その政治家は自分が何もわかっていないことを暴露して信用失墜、国を誤った方向に導いたことになる。そんな政治家に将来を任せられないのは明らか。政治家失格の烙印を押されるのは明らか。それゆえ、勇気ある政治家だと私は思う。もっともどえらく間違った勇気だと私は思うが。

経理担当常務が「このままいくと、わが社は、資金繰りが危ない」と警告を発した時、営業担当副社長や、人事担当者副社長が『大丈夫』と太鼓判をおすことは、まずない。

 

3,「矢野財務官発言はXデイの予兆」

国民に警告を与えた矢野財務次官は大いに尊敬する。職を賭すことになるかもしれない前代未聞の勇気ある行動を事務次官が取らざるを得なかったとは、X デイのまぎれもない予兆だと私は思っている。

ただ9日の日経新聞によると麻生太郎前財務大臣に公表の許可を事前に得ていたという。それを読んで「財務省の組織防衛」の可能性もひょっとするとあるのかな?と思い始めた。財務省は裏の裏まで、数字をつかんでいるから、国の財政状況はわが国で一番わかっているはずだ。

「もう持たない。限界だ」と思ったからこそ、組織として、事務次官名で、この見解を発表したとも考えられる、そうすれば後に「財務省はきちんと警告を与えていた」との証拠になる。私の中ではこの見方は20%くらいに過ぎないが、その見方でも、これはX デイの予兆だ。

もっとも、私は財務省は、こんなエクスキューズをしなくても、バラマキに対し、今までも(100点満点とは言わないが)、可能な限りの抵抗をしてきたと評価している。なにせ「ばらまけ派」が「財政危機は、財務省の嘘」と非難し続けてきたほど「財政派危機」を財務省は言ってきたからだ。

ただ黒田日総裁が禁じ手中の禁じ手の財政ファイナンスを開始したことに関し、総裁が財務省出身である以上、多少の責任はあるのかも。

 

4.「矢野財務相事務次官がおっしゃっていることは、ごく当然のこと(抜粋)」

旅行に行く飛行機の中で、矢野事務次官が文芸春秋に書かれた記事を読んだ。素晴らしかった・ごく当然な感覚だと思う。「この原稿では, 国民の皆さんにも, 事実を正直にお知らせし,率直な意見を申し上げて, 注意喚起をさせていただきたいのです」

「経済成長だけで財政健全化」できれば、それに越したことはありませんが、それは夢物語であり幻想です わが国は、 向こう半世紀近く続く少子高齢化の山を登りきらねばなりません。(略)「平時は黒字にして、有事に備える」という良識と危機意識を国民全体が共有する必要があり、歳出・歳入両面の構造的な改革が不可欠です。世界の日本以外の先進国は、経済対策として次の一手を打つ際には、 財源をどうするかという議論が必ず成されています」

「また先進国では、特にポスト・コロナ政策については、そもそも財政出動というより、民間資金をいかに活用するかが議論されています。この期に及んで『バラマキ合戦』が展開されているのは、欧米の常識からすると周回遅れどころではなく2周回遅れ。財源のあてもなく公助を膨らませようとしているのは日本だけなのです」

「そればかりか過剰な給付金や補助金は、かえって企業の競争力を削ぐこととなり日本経済の活力をも劣化させてしまいます 」

「そもそも、 欧米ではすでに超低金利政策の出口戦略が模索されている中で、こんな悠長な議論をしていてよいのか、といった根本的な問題もありますが、 それはさておくにしても、誤った認識に基づく放漫財政で国を危うくすることは許されません」