「ビットコインとドル/円:需給が価値を決める」「日銀が債務超過になった時、政府の資本注入で日銀は救われるか?」

2024年03月18日

(ここに述べる意見/分析は私が所属する政党の公式見解でも分析でもありません。私の個人的見解・分析であることをご理解ください)

 

1.「ビットコインとドル/円:需給が価値を決める」

この数日間別として、ビットコインが爆謄している。また円はじり安がいている(私は円はこれからが大暴落だと思っているが)。

私は長年、ビットコインを購入したら、酒食らって寝ていろ、ドルを買ったら酒を食らって寝ていろ、と言い続けてきたが、その理由には共通部分が多かった。ビットコインの発行量には上限がある一方、円は過激な財政ファイナンスの結果、際限なくバラマかれ続けざるを得ないという点。ビットコインであれ、通貨であれ、モノやサービスと同様、供給過多になれば、その価値は棄損していく。YCC を解除したとしても他国中央銀行と異なり日銀は円をバラマき続けざるを得ない。円の価値が今後、急落(=インフレ&円安)が進行する)していくのは当然の帰結。

1年ほど前から言っているように、ドル円の主要決定要因は、金利差から、発行量比、そして中央銀行の財政の健全度の比較に移っていくだろう。そうなれば円はイチコロ。

 

2,「日銀が債務超過になった時、政府の資本注入で日銀は救われるか?」

昨日、以下のリツイートを私のX にいただいた。.

「最終的な出口が無さそうなのは藤巻先生の説通りだと思います。 日銀の債務超過とタコが自分の足を食べるような資本注入のどっちがマシ?という話に帰結しますが、最後の悪あがきの資本注入があり得るか藤巻先生の意見を聞きたかった次第です」

以下のように返信した。

「中央銀行が赤字になっても大丈夫なためには3条件があります。①債務超過が一時的だと世界が判断した時②金融システムリスク(=民間金融機関の連鎖倒産など)救済のために中央銀行が赤字になってはいるが中央銀行自体は健全であるとき③国の財政が健全化に向かっており、税金で集めたお金で中央銀行への資本注入が可能な時、です。日銀には何一つ満たしていません。国がこれほどの大借金をしているのに日銀が紙幣を刷って国債を買い、そのお金で日銀に資本注入をするなど蛸が自分の足を食べるようなニュースが世界に流れたら、その瞬間、世界中から日本売り(日本株、日本国債、円)が起こり日銀は即死です」

 

3.「植田日銀総裁のハチャメチャ答弁」③

先週木曜日の予算委員会での植田日銀総裁のハチャメチャ答弁を15日に紹介したが、ハチャメチャ答弁まだまだある。今日も一部を載せる。質問にまともに答えたら、とんでもないことになることを頭の良い植田総裁はお分かりだったからハチャメチャ答弁になるのだろう。

以下議事録から。ご存じのように、事前に質問通告をしていたのに、この答えである。

「藤巻健史君:私が、日銀、前、黒田日銀総裁にお聞きしたとき、日銀が償却減価法を取っている理由の一つは保有国債を、かって売ったことがないからとお答えになりました。もし一度でも日銀が保有国債を売れば、残りの全保有国債に時価会計を適用するとの理解でよろしいですか。そうなると、巨大な評価損が巨大な実現損に変わるわけですけれども、日銀は大丈夫ですか。お答えください」

参考人(植田和夫君):国債につきましては、過去政府からの要請に応じて売却したケースなど一部の例外を除きますと売却を行っておらず、こうした点も踏まえて、償却原価法の採用が適切であるというふうに考えております」

(私のコメント)私の質問は、もしインフレが加速して売りオペをせざるを得なくなった時、少額でも売却をすると全保有国債に時価会計を適用する必要がある。それは巨大評価損が巨大実現損に替わり、超巨大赤字の損益計算書の発表になるが、それでも日銀は大丈夫か?との質問。現状、どの会計基準が適切かなどを質問していたわけではない。

なお、1998年に制定された日銀の会計機基準は「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準を尊重して行う」だ。「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」とは、満期保有目的の債券は簿価評価でもよいが、一部でもその分類の債券を売却すれば、その時点から満期保有目的の債券でも時価評価を採用しなくてはならない、というもの。

したがってインフレが加速していった時、日銀は、(大赤字決算を恐れて)インフレ加速を指をくわえて眺めているだけになるのか、それとも1998年に制定された「日銀の会計機基準」を変更して簿価会計を押し通すのか?の2者選択となる。苦しさに負けて会計基準の変更を選択すれば、それはまさに粉飾決算と世界中から認識される日銀尾信用(=円の信用)は失墜するだろう。

もっとも世界で相手の信用を審査するのは、完璧な時価会計でおり、審査される側(この場合は日銀)がどんな会計基準を採用しているかなどは関係ない。

日銀が答弁する「日銀は償却原価法を採用しているから保有国債に巨大評価損が発生しても大丈夫」とのいつもの詭弁はちゃんちゃらおかしい。

 

4.「植田日銀総裁のハチャメチャ答弁」④

先週木曜日の予算委員会での植田日銀総裁のハチャメチャ答弁その④

以下議事録から。「藤巻健史君:2001年3月19日の日銀政策金融決定会合、当時審議委員だった植田総裁(当時)は量的緩和をするには普通の短期金融資産では恐らく無理になってくるだろうから長期国債買いオペの増額と思う。それで期待インフレ率が上がって金利が上がっていったり景気が良くなっていくならばよいが。ならないと地獄になるとおっしゃっているんですね。(中略)(それから23年たちますけれど)ちっとも金利は上がっていないし、当時と比べて景気がめちゃくちゃ良くなったわけではありません。当時の、日銀植田総裁は地獄になるとおっしゃっていますが、これから地獄が来るんでしょうか。それともあの時の審議員であった植田さんの発言は誤りだった、杞憂だったというふうに反省してされているんでしょうか」

参考人(植田和夫君):「先ほど申し上げましたとおり、様々な理由から、基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、少しずつ高まっていると状況でございます」

(私のコメント)それ、回答になっているのか?事前に質問通告しているのにこの回答?23年前の植田審議委員(当時)の懸念された地獄とは、まさに今、私が懸念している財政ファイナンスによるハイパーインフレ(=円紙くず化)だとも割れる。学者としてわかっているのに総裁となると自分が信じていることと真逆を言わねばならないことの苦しさよ、だ。しかし聞く方は大本営発表を信じていると地獄を見る。・

 

5,「「幸福な職業人生」

昨日、私のX に以下のリツイートをいただいた。

「業界で有名だった藤巻健史氏のプロパガンダ。今はXやWebを拝見してインプットを受け続けています。金融市場・関連税法への知識と経験、加えて洞察力は圧倒的。円が80円の時から円安を言い続けていらっしゃる。トレーダーとして最も重要な『信念』がある。憧れの大先輩です」

以下のように返信した

「ありがとうございました。私が知識と経験を積めたのは、他の日本人では経験できなかった環境にいたせいだと思います。日本の金融マンはほぼゼネラリストとしての育成を受けるのに、私は社会人人生の大部分をマーケットのスぺシャリストとして過ごしました。

(もっとも米銀にはジェネラリストはいない。私が入社したころのJPモルガンの会長、ウェザストン氏はロンドン支店に中卒でメッセンジャーボーイとして入社した人だ。その後、ずっと為替トレーダーであり、大成功し、その後、会長にまでなった(米国では実務上の最高権力者は会長であり社長ではない)。

当時のJPモルガンは世界最高峰の銀行と称されており、まさに米国版豊臣秀吉と言われたものです。

私がJPモルガンにいた頃、米国では、今、ヘッジファンドがやっている業務を銀行内でやっていましたが(その後、元FRB 議長のボルカー氏の立案でヘッジファンド業務は銀行外にスピンアウトさせられた)私はその仕事をさせてもらっていました。それも当初はJPモルガン内でも「FUJIMAKIのビジネス」と称されており、他の米銀でも小規模にしかしていなかった業務です。邦銀は、ほとんどやっていませんでした。その貴重な経験が私の知識と根性を養いました。「幸福な職業人生」だったと思います。