1.「本日発売のサンデー毎日」
本日発売の「サンデー毎日」の特集のタイトルは表紙の写真にある通り「高市『積極財政』は死に至る病である」で元毎日新聞論説委員長の倉重篤郎さんが山本謙三元日銀理事、原真人朝日新聞編集委員、そして私にインタビューをして書かれた記事だ。

2,「サンデー毎日」での私のコメントの部分の一部は以下の通り。
「続いて藤巻健史氏だ。元モルガン銀行東京支店長で、伝説のディーラーとも呼ばれた人物だ。維新参議院議員(2期)時代は、黒田東彦日銀総裁とアベノミクスの是非について延々と論戦を交わした」。
「市場から何が聞こえる?」
「異次元金融緩和政策以降の失政の膿が溜りに溜まっているところに、高市積極財政だ。僕から言わせると、日本財政の患部が破裂寸前というところについにきた、という感じだ」
「異次元緩和は量的だけでなく質的にも行った。その異常性を改めて認識すべきだ。僕らが銀行員の時日銀は3カ月の短期国債までしか買わなかった。株とか債券とか価格変動するリスク資産は買ってはいけない。債務超過になる可能性があるからだ。それが通貨の信用を守る中央銀行の矜持であり、金融論の基本だった。それが長期国債やETF(上場投資信託)購入に手を出し、10年も続けてしまった。植田日銀総裁はETF売却に110年かかると言った。長期国債をゼロにするためには何百年かかるかわからない。金利高騰は当たり前だ」
「(政府債務の対GDP比の逓減を新たな目標は)分子の債務が縮まなくても、分母のGDPが増えれば数値的には下がる、という指標で、最も簡単なのはインフレでGDPを水膨れさせることだ。この間のインフレで今まさにそうなっている。債務も増える一方なのにそれ以上にインフレが亢進することで財政健全化の指標が改善されるというインチキが罷り通るようになるが、高市政権が取ろうとしている積極財政論がそれだ」

3,「円安は続く。さらに大幅円安へ」
12月の日銀利上げをかなり織り込み、米国の利下げをかなり織り込んでドル/円は一時154円台も出落ち込んだ。しかしたった155円を一時的に割り込んだに過ぎない。今はもう156円00銭だ。
実際に米国が利下げし、日銀が利上げしたら材料出尽くしで円は下落するだろう。万が一、日銀が12月に利上げをしなかったら、利上げをを織込んでいたマーケットはびっくりし、円は大幅下落だ。日銀の「近じか利上げをやる」との「ヤルヤル詐欺』にはその後マーケットは騙されなくなるだろう。
そして「利上げをやれば日銀自体が危なくなること」を世界は充分に認識してしまう。日銀はThe End だ。
4.「日銀が後1回利上げをし、政策金利を0.75%とするとどうなるか?」
日銀が政策金利を0,25%利上げすると私の予測では年間受取利息約2.4兆円程度、支払い利息約3.8兆円で本来の通貨発行“損”は1,4兆円。株式市場が今年ほど絶好調なら3兆円の、分配金等があるから、なんとか当期剰余金のマイナスはさけられる。しかし条件は株式市場が利上げにもめげず今年ほどに絶好調であった場合である。
ただこの場合でも決算書で通貨発行益はマイナスで、本来中央銀行たるもの保有してはいけないのが原則で他の中央銀行はどこも持っていない(スイスの中央銀行が他の目的で少額補油しているのは除く)株で損の垂れ流しを回避していることを世界中に知らしめてしまう。時価会計ではない。植田総裁の大好きな簿価会計での話である。
5.「日銀が後2回利上げをし、政策金利を1.0%とするとどうなるか?」
日銀が政策金利を0,25%の上げを2回行って政策金利を1%とすると私の予測では年間受取利息約2.4兆円程度、支払い利息約5.0兆円で本来の通貨発行“損”は2.6兆円。株式市場が今年ほど絶好調なら3兆円の分配金等があったとしても当期剰余金はトントンだ。植。時価会計ではない。植田総裁の大好きな簿価会計での話である。世界は日銀財務の惨状を目の当たりにすることになる。ましてや債券の評価損も相当に膨らんでいるだろう。
その時、日銀の信用、その発行する円の信用が保持できるのか植田日銀総裁は非常に不安視するは想像に難くない。
なにはともあれ、どんなにインフレが加速しても政策金利は上げて1%までだ。あと、やるとしたら、やけっぱち利上げだ。
そう考えると今年12月に0.25%上げたら次に最後の利上げを決心するのは相当に時間がかかる。またまた「やるやる詐欺」で時間をかけるだろう。円高に転換する理由は何もない。
6,「日銀が持っている利上げという天下の宝刀でも最後なら『割りばし』と同じ」
あと1回か2回しか利上げしか出来ないとなると、本来、物価上昇を抑える天下の宝刀であり円安を抑える天下の宝刀でもあるはずの政策金利上げは「割りばし」と同じでしかなくなる。
米国留学時代、剣道4段の親友が強盗にナイフを突きつけられお金を強奪された。彼は「あの時、割りばし1本持ってさえいれば」とうそぶいていたが、私は知っている。強盗にあった時、ぶるぶる震えていて割りばしなど何の効果もなかっただろうことを。
最後の利上げなどマーケットに対しては何の役にも立たない、日銀が意図する方向と逆向きの動きを誘発するだけだ(すなわち円暴落)。

