「日経新聞上級論説委員 小竹洋之氏の論考は秀逸」「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の終焉と日銀の解散規定」他

2021年06月02日

1.「日経新聞上級論説委員 小竹洋之氏の論考は秀逸」

本日の日経新聞の上級論説委員 小竹洋之氏の論考は秀逸だ。(バイデン大統領からは)「政権が『大きな政府』を目指すように、FRBも規模と役割の両面で『大きな中央銀行』を志向してほしい。そんな期待がにじむのは隠せない」「しかし、バイデン政権とFRBの『一体化』が行き過ぎるのは危うい。サマーズ元米財務長官が景気過熱やインフレの足音を感じようと、米経済学者のノリエル・ルービニ氏が市場の一部に『根拠なき熱狂』の匂いを嗅ぎ取ろうと、苦痛を伴う金融緩和の修正には容易に動けそうにない」「左派のポピュリズム(大衆迎合主義)に押され、所得分配や産業政策の領域にむやみに踏み入るのも、あるべき姿とはいえまい」100%同意。ただ米国より、「はるかに大きい政府」「はるかに大きな中央銀行」の失敗を見て、米国はU ターンをすると思う。その意味で、日本は「炭鉱のカナリア」である。https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK311QA0R30C21A5000000/

久美子絵

2.「日本の4.2倍のGDPを持つ米国の中央銀行の資産規模は約880兆円、日銀のそれは714兆円」

前述の日経新聞上級論説委員 小竹洋之氏の論考の中に次の1節がある。コロナ下で大規模な量的緩和を続けるFRBの保有資産は、いまや8兆ドル(約880兆円)。この1年半で2倍近くに膨らみ、国内総生産(GDP)の4割に迫る。バイデン政権が巨額の財政出動に走り、実質的なマネタイゼーション(中銀による政府債務の穴埋め)は進む一方だ」おっしゃる通りだ。ところで日銀はどうだろう。日銀の資産規模は今や714兆円。日本の4.2倍のGDP規模の米国の中央銀行の資産規模が880兆円。FRB の資産規模はGDPの4割に迫る。日銀は1,3倍に迫る。私が「日銀はもう限界を越している。もうOUT 」という理由だ。日本政府は巨額の財政出動に走り、実質的なマネタイゼーション(中銀による政府債務の穴埋め)はとんでもない規模に達している。

3.「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の終焉と日銀の解散規定」

円LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の公表停止が2021年末に迫っている。感慨深い。固定金利VSLIBOT 取引の金利スワップは私が邦銀ロンドン支店で勤務している頃にロンドン市場で盛んになった。当時は、1件1件、個別契約書を作り弁護士にチェックをしてもらってから契約書を交わしていた。「done」という言葉で契約書無しが当たり前だった我々の世界では極めて異質の取引だった。この契約書にいちいち弁護士がいちゃもんを付けてくるので、deal は成立しているのに契約書が買わせない。「これでは満期が来るまでに契約書が交わせないじゃないか」と私は不満たらたらだった。その弁護士たちのクレームの一つが「LIBORが無くなったら、この契約はどうなってしまうのか書いてない」というのがあった。「そんなアホな。LIBORが無くなるわけがないじゃないか。そんなこと気にしていたらマーケットなど成り立たない」と弁護士と喧嘩したものだが、、当時はありえないと思ったことでも起こりうるんだな~との感慨だ。法律家は万が一の事態も想定するんだな~、そしてそれが起こることもあるのだな=と思ったものだ。ところで、日銀法では「日銀が解散した場合、残余財産分配権は出資者には認められておらず、国に帰属する」と日銀の解散時のことも想定している(第9章 第60条2項)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-01/QTYZKUT0G1KW01?srnd=cojp-v2

4,「楽譜を見ないことで適度な緊張が生まれ 、良い演奏につながる、指揮者小泉和弘さん」

昨日は19時からサントリーホールで追っかけをしている小泉和弘さん指揮の都響定期演奏会。先月は緊急事態宣言で休止だったので、今回が待ち遠しかった。癒された!!2曲とも聞いたことが無い曲で、車の中で予習していた限りでは楽しめるか非常に心配だったのだが、大満足。生の演奏はさすがに違う。「オネゲル:交響曲第3番 「典礼風」フォーレ:レクイエム Op. 48」。小泉さんはいつも暗譜で指揮をされるが、昨日も、あの脈絡が無いと私には思える曲を暗譜しているのだから、天才だ。以前、楽譜を見せていただいたことがあるか、指揮者の楽譜は、すべての楽器の楽譜が重ねて書いてあるのだ。私など一つの楽器の1小節さえ暗譜出来ないのに、と驚愕したことを覚えている。マエストロが、今年1月から中部経済新聞に連載した回顧録には「そして、僕は基本的に楽譜を見て指揮はしません。 自分の中に取り込んだ音楽を直接に発信していることが重要だと思うからです。 音楽との関係がストレートでありたい。 オーケストラとの間に何かお返したくないのです。 楽譜を見ないことで適度な緊張が生まれ 、良い演奏につながります 」との記述がある。すばらしい!

それにしても、コロナ禍は飲食店もそうだが芸術家も本当に大変だ。補助金もないだろうし。

小泉さん