「私の人生で最も名誉な拙稿@『The International Economy』」他

2021年11月13日

1.「私の人生で最も名誉な拙稿@『The International Economy』」

一昨日発売の「The International Economy」の2021年秋号に拙稿が載った。

外国の経済誌は、論者やトピックの選定をするレフリー役のコミティーがあって、その顔ぶれにより雑誌の権威が決まる。「The International Economy」のレフリーはグリンスパン・元FRB 議長、トリシェ・元欧州中央銀行総裁、ドラギ・元欧州銀行総裁、ジョージ・ソロス氏、ポール・クルーグマン・プリンストン大学教授、ケニス・ロゴフ・ハーバード大学教授等、錚々たる布陣で、それがゆえに世界最高峰の経済誌の一つとの評価を得ている。最近、私は2回に1回は寄稿を依頼される。毎号、日本人で選ばれるのは一人か二人にすぎないから、大変な名誉だと認識している。JPモルガン時代の実績、知名度、発信力のおかげだと思っている。

今回は、トピックがトピックなだけに 各国の元中央銀行総裁や元財務長官は寄稿しておらず、また27人中5人は日本人と、日本人著者が多かった(内2人は財務省元財務官)。とはいえ、なんと、私の拙稿が巻頭だった。感激である。今までいろいろモノを書いてきたが、我が人生で最も光栄な書き物とする。

巻頭掲載だったことの意味は、拙稿がimpressiveなものだとレフリーが評価したのだと思う。純粋な理論経済学者は別として、実際の市場に関心を持つ欧米の経済学者や実務家、FRB当局者等は、多くがこの経済誌を読んでいると思うので、「今回の欧米のインフレは日本が経験したバブル時の資産インフレと同類」との私の考察に今後、注意を向けてくれると考える。中央銀行当局が、それを政策決定に反映してくれれば、バブル発生&崩壊による世界同時不況という最悪シナリオを回避できると考える。

 

2、「米国が日本化するリスク」

拙稿が巻頭論考となった「The International Economy」の2021年秋号の特集のタイトルは「To What Extent, if Any, Is the U.S. Economy at Risk of Becoming “Japanized?”だ。「米国が日本化するリスクはどの程度あるか」ということだが、“Japanizedという単語は彼らが2年半前の特殊で使った「日本病」と同じ意味を持つ。私の回答は、「(米国が)日本病にかかるリスクはFRBが(バブルの時の)日銀の政策ミスをきちんと学ぶ意思があるかにかかっている」だ。。編集者が「Please feel free to distribute or mention on social media」と書いてきているので、ここに載せる。

The International Economy (international-economy.com)

今号は特集が2つあるが。後の方の特集「「To What Extent, if Any, Is the U.S. Economy at Risk of Becoming “Japanized?」(名前がずらずらと書いてあるところ)をクリックしていただければ読める。拙稿を要約すると以下の通り。

FRB はインフレは一時的との見解を繰り返しているが、私は資産価格の高騰が主因だと思っている。日本のバブル時(1985年から90年)は狂乱経済と言われるが、これは資産の高騰によって起きたものだ。注目すべきはCPIが非常に低かった点だ。(1986年、87年は0.7%、88年は0.9%:東京)一方、長期金利は5%近辺O/N コールレートは4.375%(1988年末)だから実質金利は極めた高かったことになる。高い実質金利では狂乱経済の発生の説明がつかない。この時、日銀はCPIのみに気を取られて、資産価格の高騰に目を向けなかった。不動産価格の上昇は、帰属家賃としてCPIに反映されると無視したのだ。資産価格上昇無視の結果、日銀は引き締めが遅れ、日本は、その後の『失われた30年』を迎えてしまった。澄田日銀総裁(当時)は、資産価格の動きの重要性に気が付かずに、金利引き上げが遅れたことについて「CPIが過熱していないのに資産価格だけが高騰する現象は、日本でも、世界でも初めての現象だった。それゆえに見逃してしまった。激しい資産インフレの衝撃を認識していなかったのは私の責任である」と本の中で大いに反省しているのだ。 景気が過熱すれば当然、インフレになる。日本が、この時、インフレにならなかったのは狂乱経済という強烈なインフレ要因を、「激しい円高」というデフレ要因が相殺した(251.58円(1984年末)―>122.00 円(1987年末))からだ。今の米国には、その強烈なるデフレ要因が存在しない。また米国の株式は日本のバブル時同様、史上最高値圏にある。しかも米国人は401Kの普及等で、当時の日本人よりよほどに株式を保有している。この資産効果(お金持ちになった気になりお金を使う)は強烈だろう。したがって、パウエル議長は、澄田総裁と同じ間違い(金融引き締めの遅れ)を起こし、とんでもないインフレを引き起こしてしまうリスクを背負っていると思う。なお、バブル時の日本と違い、今の米国の有利な点は①警戒感を持つ人がほとんどいなかった当時に日本に比し、今の米国には多少なりとも警戒感がある。②簿価会計だった当時の日本と違い、今の米国は完全な時価会計が採用されている。損切りが早く出来るがゆえに回復が早い、点であろう」

3.「米インフレ率、複合的要因が押し上げ-予想外れエコノミストは悔し涙」

昨日のブルムバーグ記事。「パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長をはじめとする金融当局者の多くは今年、物価圧力は一過性のものであることが判明するだろうとの見方を重ねて示してきた。パウエル氏は先週、高インフレが何カ月か続くとしても労働市場が一層改善するまで利上げの検討に入らないと語った。  一方で、サマーズ元財務長官やダドリー前ニューヨーク連銀総裁を含む一部の著名エコノミストは過去1年近くにわたり、一段と高水準で持続的なインフレについて警告してきた」私は当然、後者派。。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-11-12/R2FJQXT0AFB401?srnd=cojp-v2