「発行国債の短期化は、万事窮す、のシグナルか?ますますインパールに向けて前進」他

2021年02月23日

1.「発行国債の短期化は、万事窮す、のシグナルか?ますますインパールに向けて前進」。

東洋経済によると、「1年債の構成比は、第2次安倍晋三内閣以降は18%前後で安定的に推移していたが2021年度予算では39.6%も発行する。さらには、2年以下の国債比率は全体の56.8%にのぼる」とのことだ。要は国債発行の短期化だ。

私がこの記事を読んだ時の、第1印象は「ついに日銀も長期国債の(実質)引き受けはもう出来ないと泣きを入れたか」だった。日銀も出口を考えたら長期債を無限に買い進むわけにはいかない。だから泣きを入れた。(もっとも私は、もう遅すぎて出口はない。日銀は廃さざるを得ないと思っているが)

日銀が買取を拒否すると、(めちゃくたに高い金利にする以外)他の買い手はいないから、政府は長期債を発行できない。だから短期債の発行にシフトせざるを得ない。その結果、東洋経済の書くように、政府は、ますます自転車操業を強いられる。皆さんが銀行から10年の資金を借りれば、10年間は借り換えの心配をしなくていいが、6か月で借りれば、6か月ごとに資金繰りに奔走しなければならなくなるのと同じだ。今、6か月のお金を貸してくれている銀行が6か月後も同額を貸してくれるとは限らない。その意味で自転車操業の自転車のタイヤが細くなった。フラフラ運航だ。

https://www.msn.com/ja-jp/money/other/2021%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e4%ba%88%e7%ae%97-%e7%9f%ad%e6%9c%9f%e5%9b%bd%e5%82%b5%e3%81%8c4%e5%89%b2-%e3%81%ae%e7%95%b0%e5%b8%b8%e4%ba%8b%e6%85%8b-%e7%9f%ad%e6%9c%9f%e5%82%b5%e5%80%9f%e3%82%8a%e6%8f%9b%e3%81%88%e3%81%ab%e5%a5%94%e8%b5%b0-%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%e5%af%be%e7%ad%96%e3%81%ae%e9%ab%98%e3%81%84%e4%bb%a3%e5%84%9f/ar-BB1dSTSw

2.「発行国債の短期化は金利上昇期には愚の骨頂。でも」

国債発行の短期化の、さらに大きな問題は、私が「統合政府で考えると、日本は、財政がさらに危険なことが判明する。統合政府で考えると、財政は健全論はとんでもない。」といつも言っている理屈と同じだ。

今まで政府は10年、30年、40年の固定金利債を出していた。世界中で金利が上昇しようというときに、低い固定金利で長き期間の資金を確保できたのは貴重だった。しかし、せっかく政府が長期固定債を発行して安定資金を確保しても、それを日銀が購入して、日銀当座預金残高を増やすならば、金利上昇期に日銀が危なくなる。

政府のバランスシートで考えると長期固定金利の債務だったものが、統合政府で考える日銀当座預金という非常に短い期間の債務に置き換わってしまったのだ。金利上昇時に大きな被害を受ける。国会議員時代、日銀は国の弱体化の手助けをしているのか?と黒田総裁を追求したが、いつも通りのノラリクラリ回答だった。

日銀がギブアップしたので政府自身が債務の短期化を図らざるをえない。世界的な金利上昇期に、だ。住宅ローンを金利上昇期に長期固定から変動金利に換えるほどの愚行だが、それしか危機を先送りする手段はないのだろう。危機の先送り、先送りで、日本国は。ますますインパールへ向かって進む。

3.「昨日も激しかったベアスティープニング化」

昨日のNY市場でもベアスティープニング化が激しい(金利上昇期に長い期間ほど金利が上昇する。イールドカーブが立つ)この1か月間で米国2年物が1bpしか上昇していないのに、5年物は17bp、10年物は28bp 30年物は33bpの上昇だ。私が拙著の中でもお勧めしてきた債券ベアファンドは急騰。(例えばDirexion Daily 20+Year Treasury Bear 3Xの値段はWEB 講義をした昨年9月からは2倍、今年に入ってからだけでも34%上の昇だ)。まだまだこれからだろう。

4.「市場のコンセンサスは『長期金利上昇』」

市場には先行きの見解が分かれているものと、ほぼ一方向に固まったものとがある。今の株式市場や為替市場は前者だろうし、長期金利市場は後者だろう。上昇(=価格は下落)が市場のほぼ統一見解だ。私は現役時代「逆張りの藤巻」と言われていたが、「逆張」をするのは、マーケットの方向が理屈にあわない時だけだ。今の長期金利上昇に対して逆張りをするのは、マーケットの勢いからしても、理屈からしても自殺行為だと思う。1980年に米国長期金利は20%を超えたことを忘れてはならない。今はたったの1.37%だ。まだ長期金利が急騰していないのは、大量保有した機関が、売却に踏み切れていないからに過ぎない。踏み切れていない理由は、あまりに大量に保有しすぎているからと、中央銀行の介入(長期金利上昇への警告)を期待してのことだろう。しかし長期金利は政府や中央銀行と言えどもコントロールできないのは相場の歴史が証明している。政府の口先介入で長期金利が下落(=値段の上昇)したときは、「この時とばかり」の売りが殺到するだろう。

5.「インフレ懸念(=長期金利の上昇)」

以下、昨晩のブルムバーグ記事。「ここ数週間だけでも世界的な半導体不足や米生産者物価の急上昇など、(インフレうぃ)懸念すべき兆候はある。  景気見通しが明るくなり、新型コロナウイルスの新規感染者数が減り、追加経済対策が近づく中で、インフレに対する懸念が強まっている。」「シティグループの米株担当チーフストラテジスト、トビアス・レフコビッチ氏はリポートで、価格決定力に言及し、『先行指標はインフレへの不安が生じつつあることを示唆している。(略)』と論じた」

気に留めていなかったが、確かに半導体不足はインフレ兆候として注目すべき指標かもしれない。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-22/QOWPATDWLU6F01?srnd=cojp-v2

 

6.「飛行機事故と日銀の状態」

デンバーからホノルルへ向かう飛行機の機体の一部が住宅街に落下のニュースを聞いて思い出すのは、留学直後に乗ったローカル飛行機でのこと。車輪が着地した瞬間に私を除く乗客全員が盛大な拍手をしたのだ。パイロットがさかんに放送はしていたのだが、英語を全く聞き取れなかったし注意もしていなかった。パイロットの声もが冷静だったからだ。乗客も特に騒いでいなかった。だから、この拍手は何だったのだろう?と、いまでも不思議に思う。飛行機がバスのように使われている国だから、乗客が飛行機に興奮したわけでもあるまい。直地直後の拍手だから、パイロットの結婚記念日とかでもあるまい。ひょっとして機体の故障を抱えての飛行だったのではないか?英語がわからなかったおかげで、何も心配しなかった私は幸せだったのかもしれない。

ところで金融知識のない人は、今の日銀の財務の不健全さを心配していないだろう。私は、金融知識や実務経験があるから心配になる。しかし、それが吉と出るか凶と出るかは、日銀の将来によって変わる。日銀が廃され円紙幣が紙くずになるのなら、金融知識があり、危機対応をした人が助かる。日銀が無事であれば危機対応は杞憂で終わる。私は、金融緩和の出口がないから無事であるわけがないと思っているので危機に備えるが。

7.「池尾和人・慶応大名誉教授ご逝去」

池尾和人・慶応大名誉教授が21日に68歳で亡くなられたとのこと。池井教授は私が金融庁の東京市場国際化スタディー・グループのメンバー だった時の座長だった。メンバーにはのちの三菱UFJグループの総帥になった平野さん他、多くの論客がいて活発な議論をしたが、それを取り仕切っておられた。また池尾先生は、財政赤字への警告をしばしば発せられた尊敬すべき先生だった。早すぎる。合掌!

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG227LA0S1A220C2000000/ 

8「クラス仲間ご逝去」

しばしばミニ同窓会を開いていたメンバーの一人の四谷の雙葉幼稚園のクラスメートの女性が一昨日深夜亡くなった。彼女の自宅近くに住む準ちゃんからは、数日前、お嬢さんからの電話を受け、自宅にお見舞いに行ったとき、覚悟をされてはいたものの、お化粧もされ、シャキッとした対応で、彼女の美学と強さに感銘したとの報告ももらった。1か月程前にも、やはり同じクラスだった女性一人が亡くなった。合掌!  

9.「庭の梅が満開」

庭の梅が満開、シジュウカラが替わりばんこに飛んでくる。その隣では白木蓮のつぼみが。両方とも2月中に満開を迎えそう。ふきのとうも、もう花になった。家内に言わせると、すべて例年より1か月近く早いそうだ。異常気象かな?そういえば、東日本大震災の直後、原発懸念で誰も外を歩いていないシーンとした中で、白木蓮が満開なのを見て、もの悲しい気分になったことが思いだされる。

梅

ふきのとう