「米国で高まる景気過熱リスク」「制御不能の長期金利高騰のリスク」他

2021年02月24日

1.「米国で高まる景気過熱リスク」

今朝4:32分発の日経電子版の記事。「米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日の議会公聴会で、足元の長期金利の上昇について問われ『経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ』と述べ、当面は静観する考えを強調した」そうだ。さらに「ただ、議員との質疑応答では経済の過熱リスクを繰り返し問われた。大規模な金融緩和と財政出動によって、金融資産や不動産などの価格が高騰しているためだ」そうだ。議員から繰り返し聞かれたとは、市場どころか経済界などでも景気過熱リスクを心配しはじめたことの証左だろう。これでは長期金利はさらに上昇しよう。私の実務経験からすると、こういう時は往々にして、。制御不能な動きが生じる。長期債保有者は早く撤退、短期証券に避難した方が無難だと私は思う。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN234RM0T20C21A2000000/

2.「心配すべきは日本」

本日の日経新聞1面の「パクスなき世界」いわく「「コロナ禍で政府の借金は積み上がった。米政府債務は2020年に国内総生産(GDP)比で100%を超し、第2次大戦時に並ぶ『戦時財政』にある。」「米国がコロナ禍で膨らんだ『戦時債務』をいかに制御し、ドルの信認を保つか。怠れば米国の衰退は速まる」この記事の論旨には賛成だ。しか~し、日本の政府債務は体GDP比266%で、米国よりはるかに悪く、(預金封鎖や新券発行があった)第2次世界大戦直後よりはるかに悪い。この記事の表現を借りるなら「日本は平時に膨らみコロナ禍でさらに膨らんだ『超戦時債務』をいかに制御し、円の信認を保つか。怠れば日本の衰退は速まる」だ。まずは、世界で財政が最悪で、ほんの少しの長期金利上昇で債務超過に陥る世界で唯一の中央銀行を持つ日本の心配をすべきだ。なおインフレとは、世界中のすべての法定通貨が弱くなることだが、為替とは相対論であり、どちらがより弱くなるか?だ。円はドルに対しい大幅に下落する(=円安・ドル高)と思う。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL085D00Y1A200C2000000/

 3.「制御不能の長期金利高騰のリスク」。

私が、JPモルガンを去った2000年以降、市場は「中程度」だったリーマンショック以外の大きな揺れを経験していない。だから、「市場は政府・中央銀行がコントロールできる」と思いこんでいる市場参加者が多いようだ。しかし、すべてを政府・日銀がコントロール出来ると思うと悲劇となる。政府・中央銀行がコントロール出来るならブラックマンデーもリーマンショックもタテホショックも資金運用部ショックも起きていない。市場は時に制御不能の動きをするものだ。特にこの20年間、政府・中央銀行が市場のメガ参加者となって抑え込んできたがゆえに、エネルギーは大きくたまっている。

一番のひずみは長期債市場にあると思う。このマーケットは近い将来、制御不能になるリスクがかなり高いと思う。本来、私たち金融界の常識は「長期金利のレベルは市場が決める」で中央銀行はコントロールできないはずだった。その原理を無視し、力で抑え込んできたのだからそのツケはすさまじいだろう。何度も言うが1980年、米国の10年国債は20%%超え、日本の10年物は11%をつけた。今、米国10年金利はたったの1.34%、日本の10年金利は、たったの0.11%。シミでしかない。