1.「物価上昇が継続すればどんな政権でも持たない」
本日、自民党の両院議員総会が開かれ、参議院選挙の総括が行われるそうだ。
平時には経済がさほど政治の焦点にならなくても景気が悪くなれば、政権は存続不能となる。その意味では、経済は普段さほど気にしていなくても、無くなるとなると最大問題となる空気の存在と同じだ。
近未来での国民の最大の不満は「物価動向」となろう。見たことのない実質のマイナス金利が継続しているし、政府が減税やバラマキという物価上昇政策を打とうとしているし、資産インフレも加速しそうだからまず間違いないだろう。
近い将来は悪性インフレが到来すると思う(最終的には日銀の信用失墜によるハイパーインフレ)が、なにせ物価の最大の番人というか唯一の番人である日銀が金利引き上げもジャブジャブ資金の回収も出来ない。日銀が驚異的な債務超過に陥るからだ(あと0.25%くらいの利上げは出来るかもしれないがそれ以上は不可能。0.25%上げると、あとどのくらい上げられるかの議論になってしまう)、
物価上昇対策が出来ず、ずるずると物価上昇が継続(それも過激に)国民の不満は爆発する。自民党の次の総裁が誰になろうとも。原野党が政権を担おうとも、次のリーダーの政権は短命だと私は予想している。
2.「国債入札未達のリスクの替わりにハイパーインフレ」
2000年に発売された幸田真音さんの「日本国債」はベストセラーになった。、
国債入札で「未達」が発生し、日本が大混乱になり財政破綻の危機が迫った話である。当時は現実味があったからこそのベストセラーだ。
ところが、今、そのリスクは完全に忘れ去られている。日銀が長期国債市場に参画し、モンスターになったからだ。(私が金融マン時代は日銀は長期国債など買っていなかった。3か月未満の短期国債を少額買っていたくらいだ。
それが2012年黒田日銀が「異次元の量的緩和」という名目での国債の爆買いを開始した。これで国債未達の危機は消え去った。後に必ず日銀が買ってくれるのだから、民間金融機関が、入札で国債購入を全くためらわなくなった。入札で購入後、数日で日銀に転売する日銀トレードという言葉も生まれた。
私は「異次元緩和」とは「財政破綻」という「危機の先送り策」に過ぎない、といつも言う理由だ。危機を先送りしたお怪我で「財政破綻の危機」は無くなったが、日銀が国債購入で通貨を発行し過ぎ、「円の価値の棄損」が始まっている。そして日銀が物価上昇に対して対処能力を失ってしまった(日規制目に入れば強烈な債務超過になり存在持続不能になってします)。
危機の先送りで溜まってしまった膿はあまりにも大きい。伝統的金融論の「財政ファイナンス(中央銀行が政府の歳出を新しい通貨の発行によって賄う)は禁じ手中の禁じ手」との教えが正しいことを、今の日本が再度証明されようとしている。初めての証明ではない。「歴史は繰り返される」のだ。
3.「元日銀理事の山本謙三さんがホームページを昨日更新」
昨日、元日銀理事の山本謙三さんがホームページをアップされた。タイトルは「正常化へのコミットを避ける日本銀行」。山本謙三さんは「金融のプロ中のプロ」である日銀マンの中でも「とびぬけたプロ」であると私が現役時代に評価していた方(今も)。
以下、「 」の中は山本さんの論考からの抜粋。―>以下は私のその部分に対してのコメント。
「金融調節の実践の観点からは、超過準備は少ない方が短期金利を効果的に誘導できる。(略)国債残高の『正常化』とは、やはり従来の平時の水準に戻すことと考えていいだろう」――>まさにおっしゃる通り。ただ先日書いた通りに「中央銀行の立場で長期国債をどんどん買うというのようなことは、常識を逸したご意見ではないか」と速水元日銀総裁が発言された直前の1998年末の日銀国債保有額は52兆円、今の保有高は568兆円と11倍。平時の水準に戻すのは無茶苦茶に大変。新しい中央銀行を作らないことには中央銀行の正常化は不可能との私の主張の一つの理由。
「それにしても、表向きの発信よりも、背後にあるホンネを探らなければならないとすれば、金融政策を素直に理解するのは難しい。中央銀行に求められる説明責任の観点からも、疑問符が付く」――>「今の物価有動向を考えれば金利を上げ、じゃぶじゃぶのお金は回収が不可避。しかしそれをやると日銀自身がどえらい債務超過になり存続不能になる(=円は法定通貨で無くなる=紙屑同様=1ドル1兆円)、だから屁理屈でも何でも何とかして金融緩和を継続しなければならない」が日銀の本音だと私は確信している。
「こうした慎重な利上げスタンスの根拠として日銀が強調してきたのは、「基調的なインフレ率」の動向である。しかし、「基調的なインフレ率」は過去、その時々で中身を変えてきたし、最近ではその定義すら明確にしていない」―>「基調的なインフレ率」議論は日銀の自死を回避しようとしての作り出した屁理屈。
「日銀が問われているのは、『異次元緩和下での巨額の国債買い入れは、事実上の財政ファイナンスではなかったか』である。これに対し、『2%目標実現のために行ったものであり、財政ファイナンスではなかった』というのが日銀の主張である。そうであれば、異次元緩和を解除した現在にあっては、財政ファイナンスでなかったことの証しとして、国債残高を平時の水準に戻す姿勢が不可欠となる」――>まさにその通り。だが長期金利が現状極めて低いのは日銀の爆買いのせい。これを解除すれば長期金利は爆謄。日銀はとんでもない債務超過、新しい中央銀行を作り、新通貨を作らざるを得なくなる(=円の紙くず化=1ドル1兆円の世界)との私が言う理由。
「当然、『物価見通し』は『基調的な物価上昇率』の動向も踏まえて作成されたものだろう。にもかかわらず、物価見通しがこれほど大幅かつ同一方向に外れ続けている事実は、日銀のいう『基調的な物価上昇率』が足元の情勢判断に貢献していないことを示す。『基調的な物価上昇率』の信頼性と、これまでの政策判断の適切性を問うべき深刻な事態である」―>まさにその通り。
https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2025/09/01/post2943/#more-2943
4.「日銀が国債を買わないとお金が無くなるなどというたわごと」
私のX に以下のようなリツイートが来た。
「国債を返済したらお金が消滅します。 お金は負債を誰かが負わないと存在できません」
以下のような回答した、
「お金は日銀がベースマネーを供給し民間金融機関の信用創造で拡大していきます。日本銀行が長期国債を買わないと、世の中からお金がなくなってしまうとの金融ド素人の教祖様の言葉を信じている日本人がそれなりの数いるようですが、そんなド素人論を世界に向けて発信したら日本人の恥ですから言うのはやめたほうがよろしいと思います。日銀は1990年代まで長期国債などほとんど買っていませんでした(買っていたのは、極小額の3ヶ月までの短期国債のみ)。日銀は約束手形や政府短期証券等でベースマネーを供給していたのです。長期国債などほとんど買っていなかった1990年以前もお金は間違いなく日本に存在したのはわざわざ説明するまでもないかと思います。日銀がベースマネーを供給するには約束手形以外でも米国債の購入でもオーケーなのです」
5,「日本の債務残高急増は異次元緩和のせい」
私のX に以下のようなリツイートが来た。
「国債発行残高は量的緩和政策とは関係ありません。日銀が買い入れしただけです。金価格は戦争などの影響です」
以下のような回答した、
「大いに関係あります。常識。日銀が爆買いするから長期金利が低位安定し、政治家がバラマキを継続し、赤字国債が膨れ上がるのです。これを財政規律の崩壊と呼びます。日銀のような市場原理の効かない参加者が市場を牛耳ると「政治家さんよ、そんなにばらまくと長期金利が急騰し、経済に悪影響ですよ」との警戒警報が鳴らずに赤字国債の発行が急騰するのです」