1,「自転車発行の国債発行」
少し古い資料で恐縮だが2019年度に国は141兆円の国債を発行している。新発債約36兆円と満期が来た国債の償還資金の獲得のための借換債の発行が約100兆円である。税収では償還資金を返済出来ないから新たに借換債を発行して償還原資を確保している。
発行金額は激増しており、国の資金調達は綱渡り、自転車操業だ。
ちなみに2025年度の国債発行額は171兆円ほどで2019年度に比べて30兆円も増えている。
この巨額の国債を財務省は調達しなければならない。買い手を探すのは大変だ。完売できない(未達が発生する)とデフォルトだから必死だ。
この状態を脱却するのは新たな買い手を探すしかない。そこで目をつけた購入者が日銀だ。日銀は自分でお金を発行できるから、限りなく国債を買える。
しかし、これは財政ファイナンス(政府の歳出を中央政府が新たなお金を発行して賄う)と言われ世界中で禁じ手中の禁じ手と言われていた手法だ。歴史の経験からお金の発行し過ぎでお金の価値が棄損し、ハイパーインフレを起こしてきたからだ。
2,「異次元緩和は財政破綻の回避策だった」
あいかわらずドル/円予想を日米金利差で説く識者(?)やアナリストがいるが、この方たちは異次元緩和の導入経緯を正確に認識していないせいだろう。
政府・日銀は「デフレ脱却」という美名(?)のもとに、財政破綻危機を先送りしたかったのだ。
もし本当に円の価値を適度に棄損させたかった(=インフレ)ならば、米国債の購入を対価に円を発行すればよかったはずだ。私は国会で若田部副総裁にも質問したが、答弁は、むにゃむにゃだった。
異次元化開始の前年のドル円は70円台だったのだからドル債購入はドル高/円安をもまねきデフレ脱却にも最強の手段だったはずだ。
しかし、それは採用されなかった。ドル債購入では財政破綻危機は回避できない。誰かが日本国債を買ってくれなければ財政破綻を回避できなかったからだ。
3,「日銀は毎年、国債発行額の60%から90%も買ってきた」
この日銀の爆買いが長期金利を低いままに押さえつけた。2019年度の国の国債発行額は141兆円と先に述べたが、この年度、日銀は96兆円もの国債を購入している。私が金融マンだった時代に国債市場にほとんど存在しなかった日銀が国の年間発行額の70%をも購入したのだ。異次元緩和以降、日銀は、毎年国の国債発行額の60%から90%をも購入をしてきた。それがゆえに日銀は残高べースで短期間に国の発行額の半分以上を保有するに至ったのだ。
どんなマーケットでも、それまで存在しなかった人が突然購入をはじめ、供給額の70%も購入すれば値段は爆謄する(長期金利は急低下)。
それは今までの超低金尾の理由だが、物価が上昇すれば、日銀はばらまかれて希薄化したお金を回収し価値を昔に戻さねばならない。
しかしそんなことをしたら、日銀はとんでもない債務超過に陥るし、長期金利は爆騰して政府も予算など組めなくなりデフォルトだ。
日銀にはもう出口はない。新しい中央銀行にとっかえざるを得ないと私がいう理由。円は法定通貨ではなくなると(=円の紙くず化)と私が言う理由だ。
4.「伝統的金融論の教えから激しく逸脱したのは日銀だけ」
欧米も同じようなことをしているではないか、と反論する人がいるがレベルが違う。欧米の中央銀行は多少は足を踏み込んでいるかもしれないが、一線は越えてはいない。伝統的金融論の教えから激しく逸脱しているのは日銀だけだ。
日銀は異次元開始以降、毎年国債発行額の60%から90%を購入してきた。FRB
はせいぜい10%である。